ことはみんぐ

演劇、美術、ミステリ、漫画、BL。趣味の雑感。

デスノート Light up the NEW world 雑感

作品概要

監督:佐藤信

脚本:真野勝成

出演:東出昌大池松壮亮藤原竜也、他

 

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注意

  • 何の気遣いもなくネタばれしています。

 

 

デスノート Light up the NEW world 

すごく面白かった。

私は原作も読んだことがないし、前作の映画もテレビで1、2回みた程度で実はそれほど好きな作品でもなかった。前作に関してはキャストでは月役の藤原竜也さんが好きなのだが、登場人物ではLが好きで月のことはどうしても好きになれない。藤原さんが主演の作品なのでもっときちんと見て好きになれたらいいなとは思うけれど、月のしていることを肯定する気持ちにはやっぱりなれなくて月がもし、犯罪者だけを葬って自分が生き残るために犯罪者ではない人、死に値する罪を犯しながらのうのうと生きているわけではない人の名前を一度もデスノートに書かなかったのなら月にも共感できたかもしれないけどそうではなかったはずなのでどうしても前作の月を主役に据えたデスノートは好きな作品とは言えない。

けれど、続編である今作はとても面白く、そしてとても好きな作品だった。

 

私がなによりも共感したのは、Lの後継者である竜崎がLから受け継いだ言葉だ。

デスノートなんてものは悪で、それを使ってその悪の所有者を捕まえるのなら自分も悪になったのと同じ、、、日曜日にみたばかりだがすでにうろ覚えでニュアンスしかおぼえていないが、そんなような言葉だった。Lは前作でデスノートに自分の名前を書くことでキラに勝った。けれどそれは負けに等しいことで、だから決してどんなことがあってもデスノートは使ってはならない。そういったことをLがその後継者である竜崎にかつて言い残した。

そして竜崎はその言葉を忠実に守ってきた。もしデスノート事件と対峙することになったなら決してデスノートを使うことなくデスノートの所有者に勝ってみせる、そうでなければLを越えたことにならないからと。

このLの思想とその意志を継ぎ、自らもLを越えたいという気持ちだけでなく、たしかにそういう人間でありたいと思ってきた竜崎にとても共感した。

やっぱり正義の味方はどれだけヒールを気取ろうが、人の気持ちが解らないと言われようが正義を貫いてほしいし、すごく冷酷な顔をしながら実はすごく優しい心を持っていてほしいんだ。

その部分において今作は、主演は三島役の東出くんなのかもしれないが私には竜崎が主役の話として見えたのでとても好きなタイプの作品になっていた。

前作でもLがやっぱり好きだったけれど、今作の竜崎はさらに好きだ。

上記したようにデスノートを所有しながら決して使わずにいるその強さにも惹かれるが、それだけではない。アーマとの決して甘えているとは当人は認めないだろうがどこか少し甘えているようなやり取りから見えてくる実はすごく寂しがりな心を持っていそうなところや、人間の友だちなんて誰一人いないといいながら、ちゃっかり三島のことはぶつかりながらも認めていてラストには新生キラだと解っていてすらなりふり構わず命を助けたいと望んで、しかもLの後継者を託すくらいもう友だちどころじゃないくらいちゃんと絆が出来上がっている一途なところもとても好きだ。そして、忠実な友だと竜崎が評したアーマが自分を塵にすると解っていながら竜崎が必死に強く望むからと三島に銃を向けたデスノート対策室の紅一点ちゃんをアーマ自身の意志で竜崎のために決して竜崎がそうしろと言ったわけでもないのに殺したというところも愛すべき竜崎という部分を表していてよかった。それだけ、竜崎がアーマに友情を、死神に対していうのもなにかおかしいような気もするけれど、死を凌駕するほどの情愛をずっと素知らぬ顔で与えてきたということでもあると感じるからだ。

アーマが塵になってしまったときの竜崎が本当にとても可哀そうで、彼にとってもアーマが唯一の友人で家族で拠り所だった時間がどれだけ長かったかと考えると本当に切なかった。そして、切ないと同時にその別れが本当にとても良かった。

この作品、ほんとに三島が主役なのかしら?登場の仕方的にもちょっとあとからもったいつけてかっこ良く(ひょっとこだけど)現れるあたり、やっぱり竜崎が主役じゃないのかしら?違うの?三島くん、語り手目線の人だから主役は語られる側の竜崎だとおもうのだけど。

いや、だれが主役でもいい。前作の流れからすれば三島は新生キラなのでキラが主役でなければなんなのだという話になるので三島と竜崎両方主役と考えればそれでいいのだろう。

ラスト、竜崎は新生キラとしてデスノートを使っていたかつての三島が時限装置つきでデスノートに名前を書いていたため、死ぬことになる。Lとは違い、自分で書いたわけではないがデスノートに名前を書かれて死ぬという同じ運命を辿ったことでLを越えたかといえば微妙なラインで少なくともデスノートには負けた感がある。けれどそんなことはもう竜崎には関係がなくてLを越えられるかどうかよりまた結局世に放たれることになったデスノートを今度こそ完璧に封印することのほうが重要でそれはつまり正義がきちんと正義であることを竜崎が願った結果なのだと思う。だから、彼は三島の過去を責めるのではなく、三島がもう決してデスノートを使うことはないと信じて彼を生かした。デスノートを今度こそ完璧に封印するために。

今作はそういう竜崎の気持ちの流れを感じさせる作品になっていて本当にとても面白かったし、とてもよかった。

ただ、Lの遺伝子やらキラの遺伝子やらという部分はとくに必要もなかったような気がしなくもないし、なんで遺伝子にこだわったの?死神が新生キラを嘱望してるというほどにキラの存在が死神にとっても新世界の神なみに重要事項だというあたりはちょっと大風呂敷感ありませんか?とか、だってそもそもキラが死んだのはおまえもうおもしろくねぇよってリュークに名前書かれたからなので新世界の神にはちょっとむりがあるんじゃ…とかまあ色々思うところはあったけれど竜崎と三島の物語としては本当にとても面白かった。

ラストのラスト、エンドロールのあとにキラが出てきて計画通りだって言ったときは、ああああ???なにがどう計画通りだって?!?!!?となったけれど、三島が新しい竜崎として牢獄を出て行ったとき、ずっと決意を固めたような神妙な、真剣な表情だったのでこの人はもう竜崎でありキラではないのだと思えたので良かった。

 

そしてこれだけはどうしても記しておきたい。

最初、この作品はそれほど興味をもっていなかった。藤原竜也さんがおそらくはほんの少しだろうけれど回想シーンだけでなく撮り下ろしで登場するということで少しは見てみたい気持ちもあったけれど映画館にまでいくほどではないかなと思っていた。けれど、とても良かったとすすめられて時間が出来たら見てみようというくらいの気持ちでちょうどもよりの映画館の近くまで出かけたのでついでに見たという状況だったためほとんど作品の情報を持ち合わせていなかった。しかし、映画が終わってやばい!これすごく面白い!すごく好きな話になってる!!!ととても興奮しながらエンドロールが流れ始めたとき、脚本が真野勝成さんだと初めて知った。

真野勝成さんは、相棒シリーズで時々脚本を手がけている方だ。そして、私にとっては最近めっきり熱が冷めていた相棒のなかでこれは面白い!と思わせてくれる作品を書いている方だった。

真野勝成さんが書かれる作品が私は基本的に好きだ。もう好みとしか良いようのない感覚で好きだ。なのでこのデスノートで真野勝成さんのお名前を見つけた瞬間、そりゃあ面白いに決まってる!好きになるに決まってる!だって好みだもん、こういう話!となった。相棒の数作しかしらないのだけれど、真野勝成さんの書かれる作品が本当に好きだ。デスノート Light up the NEW world、見られてよかった!