ことはみんぐ

演劇、美術、ミステリ、漫画、BL。趣味の雑感。

映画 3月のライオン(前編)雑感

www.3lion-movie.com

 

3月のライオンは原作をずっと読んでいた。とても好きな作品だ。映画化と聴いて主人公の桐山零くんが神木隆之介さん、島田八段が佐々木蔵之介さんと聴いて、だよね、だよね、やっぱそうだよね!(特に島田さん!)となったのでキャスト的には特に文句もなく受け入れられた。

好きな作品が映像化されるとそのキャラにイメージが合わなかったり、原作の世界をちょっと誤解して勝手に物語を作られたりと原作が好きなら好きなだけ映像化されてしまうと受け入れられないということがままあるけれど、今回は基本的に原作に物語がよく添っていてこの漫画の世界がとてもよく作られていたと思う。

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高村薫著『照柿』

注)ネタばれあり

高村薫の『照柿』を読み終わってふつふつと沸いてくる興奮を抑えられない。

この話、とても好きな話だった。

もう何年も前に高村薫は『李歐』を一冊読んだきり、他の作品に手を出せずにいた。それは、高村薫が私に合わなかったからではない。むしろその逆だ。『李歐』が本当に私にとっては何度も読み返し、何年経っても熱の冷めない作品だったからだ。初めて読んだ直後に再三再読を繰り返し、その一時の熱が多少、緩やかになってくると一年くらいはさすがに放っておいてでも発作に襲われるように年一、二回読み返すというサイクルがずっと何年も続いていて李歐だけで本当にお腹いっぱい胸いっぱいで他の作品にどうしても手が出せなかった。だから高村薫のその他の作品はずっといつか読もう!と思いながら時々思い出したように積読に作品を追加しつつ読まずに積んできた。

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かもめ 雑感

公演概要

演出:熊林弘高

作:アントン・チェーホフ

出演:満島ひかり田中圭渡辺大地、あめくみちこ、他

https://www.geigeki.jp/performance/theater124/

 

観劇公演

2016年11月20日 マチネ

まつもと市民芸術館

 

注意

  • 何の気遣いもなくネタばれしています。

 

 

これは、とても好きな戯曲だ。なにが起きるわけでもない。いや、たしかに起きることはある。しかし、それはとてもアンニュイで物語の中の人生にはよくありそうなことだ。ラスト、登場人物の一人であり売れない小説家のトレープレフ、コースチャは結局自殺する。話の中盤でも一度自殺未遂をする彼は結局、最後には免れない死を迎える。決して明るい話ではない。ラストのことを考えればとくにそうだ。しかし、このアンニュイな雰囲気の話が私はとても好きだ。

私が読んだ戯曲では、おそらくトレープレフを主人公としてとらえている。しかし、今回のかもめは満島ひかりさんが主演でたしかに満島さん演じるニーナが主役だった。だれに主軸をすえるか戯曲が変わるわけではないがそれだけで主役級の登場人物ならばだれでも主人公の座を得ることができるということがよく解る。

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