映画 3月のライオン(前編)雑感
高村薫著『照柿』
注)ネタばれあり
高村薫の『照柿』を読み終わってふつふつと沸いてくる興奮を抑えられない。
この話、とても好きな話だった。
もう何年も前に高村薫は『李歐』を一冊読んだきり、他の作品に手を出せずにいた。それは、高村薫が私に合わなかったからではない。むしろその逆だ。『李歐』が本当に私にとっては何度も読み返し、何年経っても熱の冷めない作品だったからだ。初めて読んだ直後に再三再読を繰り返し、その一時の熱が多少、緩やかになってくると一年くらいはさすがに放っておいてでも発作に襲われるように年一、二回読み返すというサイクルがずっと何年も続いていて李歐だけで本当にお腹いっぱい胸いっぱいで他の作品にどうしても手が出せなかった。だから高村薫のその他の作品はずっといつか読もう!と思いながら時々思い出したように積読に作品を追加しつつ読まずに積んできた。
続きを読むかもめ 雑感
公演概要
演出:熊林弘高
https://www.geigeki.jp/performance/theater124/
観劇公演
2016年11月20日 マチネ
注意
- 何の気遣いもなくネタばれしています。
これは、とても好きな戯曲だ。なにが起きるわけでもない。いや、たしかに起きることはある。しかし、それはとてもアンニュイで物語の中の人生にはよくありそうなことだ。ラスト、登場人物の一人であり売れない小説家のトレープレフ、コースチャは結局自殺する。話の中盤でも一度自殺未遂をする彼は結局、最後には免れない死を迎える。決して明るい話ではない。ラストのことを考えればとくにそうだ。しかし、このアンニュイな雰囲気の話が私はとても好きだ。
私が読んだ戯曲では、おそらくトレープレフを主人公としてとらえている。しかし、今回のかもめは満島ひかりさんが主演でたしかに満島さん演じるニーナが主役だった。だれに主軸をすえるか戯曲が変わるわけではないがそれだけで主役級の登場人物ならばだれでも主人公の座を得ることができるということがよく解る。
続きを読む